千曲川 鼠橋地区

 当初の中心課題は目的2と3であり、河川生態学研究の基礎調査が行われ、 水域と陸域の生態学について貴重な研究成果が得られた。 ところが、1999年8月に千曲川では鼠橋上流地区の中州全面が冠水する大規模洪水が 17年ぶりに発生した。これを契機に、鼠橋地区において洪水による撹乱が 河川の生態系にどのような影響をもたらしているかを解明するため、 さまざまな研究を実施し、以下のような研究結果が得られている。
洪水前後 ●植生の変化
・1981~1985年の洪水以来、樹林化に伴って失われてきた礫面の自然裸地が 約14年ぶりに広範囲に形成された。 この結果、洪水前(1996年)には鼠橋地区の1%にも満たなかった自然裸地が、 洪水直後(1999年)には約22%まで増加した。また26%の面積で樹林等の植物群落の流失が生じた(下グラフ参照)。
自然裸地変化グラフ 洪水前後の自然裸地などの変化
●鳥類の変化
・洪水撹乱によって植生が流失し、州や崖が増加すると、その州や崖を利用する鳥類の増加がみられる。 そして、再び植生が繁茂し樹林化していくのに合わせて、今度は草原性・森林性鳥類が増加する。 洪水による撹乱によって、このサイクルが繰り返され、河川における鳥類群集の多様性が維持されている(右図参照)。
●魚類の変化
・独自の魚類群集を形成していたワンド・タマリが、洪水後には本川と類似した群集に変化した。 これは洪水によってワンド・タマリが冠水し、本川から避難した魚類が流入したことによると考えられる。
●水生昆虫の変化
・洪水後の水生昆虫の回復は小型のユスリカ類から始まり、 2~3週間後には小型のカゲロウ目が増加するなど生活史の短い水生昆虫類から回復している。 現存量としては1年後には回復するが、生活史の長い水生昆虫の回復には1年以上の時間経過を必要とする。
・洪水前と比較して、洪水直後にはガガンボ科やトビケラ目の成虫がかなり多く捕獲された。 これは、洪水を契機に、幼虫がいっせいに羽化したためだと考えられる。
変動予想図 洪水による撹乱に伴う鳥類群衆の周期変動予想図
洪水に伴う土崖と白州の増加によって、それを利用する崖営巣種や砂礫地営巣種が増加するが、 植生の回復に伴って減少し、森林性鳥類や草原性鳥類がこれに替わって増加する。 しかし、洪水によって再び出現種が変化することを示している。

ウグイ 鼠橋地区タマリに群れるウグイ

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