3.生物現存量、種構成、生物の多様性、物質循環、 エネルギーの流れを明らかにすることにより、 河川生態系の構造と機能を解明し、 河川に対する生物の役割を明らかにする。 これらを用いて河川の環境容量を推定する。

★調査内容
 2で設定したリーチのいくつかについて、調査手法を確立し、 リーチへの物質・エネルギーの流入、リーチ内での変化、リーチからの流出を調査し、 物質循環とエネルギーの流れを推定し、河川生態系の構造と機能を明らかにする。
★方法
 (1)物質循環ダイナミクスの推定
  特定区間内における物質の変化や移動について調査し、物質循環ダイナミクスを推定する。
  ●水質調査………………………… TOC、TN、TP、DO、SSなど
  ●安定同位体比調査………………… C、N
  ●セグメントの上下流の水質同時観測による自浄能力の推定
  ●生物現存量及びその動態調査… 微生物、藻類、底生動物、魚類、鳥類など
  ●食物網調査……………………… 捕食―被食関係、摂食、排泄
  ●成長量調査……………………… 剥離、C,N,Pの取込み(量,速度)
  ●光合成・呼吸速度調査………… 植物、動物
  ●生産速度・分解速度(脱窒量など)調査
 (2)流入-流出量の推定
   有機炭素、栄養塩類、微量有害物質、溶存酸素などを対象に特定区間における流入量、流出量を推定する。 調査は平常時及び出水時に行う。
A.平常時の調査 流入・流出
●日射量調査
●水量調査……… 上下流端の流量、流速分布の測定、地下水の水位変動、降水、蒸発散
●水質調査……… TOC、TN、TP、DO、SSなど
●堆積物調査…… ハビタットごとに調べる
●鳥類の移動、捕食、排泄など
●魚類の遡上・降下、放流・漁獲、被食など
●両生類の水陸移動、被食、捕食など
●底生動物(甲殻類・水生昆虫など)の遡上・流下、羽化、被食など

B.出水時の調査
●出水前後の調査
・生物現存量
・河床材料
・河床堆積物
●出水時の水質調査
(3)物質循環とエネルギーの流れの推定

物質循環とエネルギーの流れ図
(炭素:一次生産者の種類)
・本川河道が付着藻類を起点とする食物連鎖を形成しているのに対して、 高水敷及び湿地小流では陸上植物を起点とする食物連鎖を形成していた。
(窒素:供給源)
・本川河道は本川、湿地小流が湧水、高水敷は降水、 地下水などに含まれる窒素を起源とする系を形成していた。
●炭素・窒素安定同位体比から推定される永田地区の3つのサブシステム
    

 4.洪水や渇水などの河川が本来持つ攪乱などの自然のインパクト及び河道や流量の管理、 物質の流入などの人為的インパクトの影響を明らかにする。
 
★調査内容
 洪水あるいは渇水前後、流量変動の大小、河川改修前後、下水処理水流入前後などについて 生物相、水質、河道形態を比較し、河川が本来もつ変動あるいは人為的なインパクトの影響を明らかにする。
★方法
 ●洪水・渇水などの流量観測  ●生物相調査
 ●河道形態、土砂輸送などの継続的なモニタリング調査  ●生物現存量調査
 ●水質調査  ●食物網調査

 5.河川環境の保全・復元手法を導入し、その効果を把握・評価する。

★調査内容
 流水制御と流量調節、河床・河原の再生、有害な外来種の駆除、植生復元などの 河川環境保全・復元手法を導入する。その効果を明らかにするために、 新たな手法を開発し、効果的継続的なモニタリングを行う。
★方法
 ●保全・復元手法の導入  ●効果の評価
 ●適切なモニタリングの実施  ●保全・復元手法の開発・提案
 ●新たなモニタリング手法の開発

導入と評価

 6.1~5に関する結果を総合し、 生態学的な視点を加味した河川管理のあり方を検討する。

【目的の相互関係】

目的の相互関係

河川管理のあり方