木津川 京田辺地区

 木津川はもともと撹乱頻度が高く、砂を中心とした広大な自然裸地によって特徴づけられてきた。 調査地区においても、かつては砂浜のような景観が広がっており、 昭和35年頃まで水泳場が設置され、多くの人々に利用されていた。 しかし、近年では砂州が固定化し、植生が発達するようになり、砂礫地環境が減少している。 そのような背景から、砂河川に特有な生態系を構成するシステムの解明に向けてさまざまな研究が行われており、 これまでに以下のような成果が得られている。
●伏流の役割
 伏流は河道内植物の給水源、伏流間隙水域(hyporheic zone)の生態系の形成、 水質の浄化機能などの役割を担うことから、その重要性が指摘されている。 木津川の砂州における研究では、以下のような調査結果が得られている。
・木津川上流域では汚濁負荷が大きいことが明らかになっており、 市街地の存在する下流域においても、生活排水などの流入による水質の悪化が予想されていた。 しかし、下流域における窒素やリンの濃度上昇は小さく、 砂州の伏流による水質浄化作用が働いていることが考えられた。
・凍結コアを用いた伏流間隙水の調査の結果、生物の卵や原生生物、 ワムシ類、ダニ類等が生息していることが確認され、 特有の生態系が存在していることが明らかになった。
昭和初期のようす 昭和初期の京田辺地区のようす
イカルチドリ イカルチドリ
クロコウスバカゲロウ クロコウスバカゲロウ3齢幼虫(左)と巣穴(右)
●撹乱がもたらす生物の生息・生育場
 砂州はもともと冠水頻度が高く、表層微地形が頻繁に撹乱される。 そうした撹乱はさまざまな生物の生息・生育場を形成しており、 生態系もこれによって特徴づけられている。 調査地においても、以下のような調査結果が得られている。
・砂礫河原に生息するコチドリ、イカルチドリ、シロチドリの3種は、 営巣する砂礫のサイズに対する選好性がみられた。
・ワンド・タマリはオイカワなどの仔稚魚の生育場のほか、 魚類の洪水時の避難場所として機能していることが明らかになった。
・クロコウスバカゲロウの幼虫であるアリジゴクの巣穴は、 砂の粒径が細かい場所(0.25~0.5mm)でよくみられた。 巣穴密度と砂の粒径の間には相関がみられること、幼虫は巣穴移動をほとんどしないことから、 成虫は営巣に適した0.5mm以下の細かい砂地を選択して産卵していることが明らかになった。
●植生の発達がすすむ河道
 木津川では近年、砂州が固定化し、ヤナギをはじめとする植生が発達するようになり、 砂礫地環境が減少している。年最大流量と植生面積の変遷を解析した結果、 大規模な洪水が減少した時期に植生が発達していること、 植生が破壊されるのは3,000m3/s以上の洪水であること (右グラフ参照)などが明らかになった。
流量と面積 年最大流量と植生面積の推移

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